ソマリアで生じている事態および米国のソマリア軍事介入に関する日本NGOの声明


2007年2月2日

(特活)アフリカ日本協議会(AJF)
アフリカ平和再建委員会(ARC)
(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)

 2006年12月24日、エチオピア連邦民主共和国軍とソマリア暫定連邦政府(Transitional Federal Government)軍は、ソマリア南部制圧に向けた軍事行動を開始し、首都モガディシュを制圧していたイスラーム法廷評議会軍(Council of the Islamic Courts)を敗走させて、2007年初にソマリア南部をほぼ制圧しました。

 これと軌を一にして、アメリカ合州国は軍艦艇を派遣してソマリア周辺海域を封鎖するとともに、1月8日、大型攻撃機AC-130をジブチの軍事基地から出撃させてケニア国境に近い南部のヘイヨ(Hayo)等を攻撃しました。報道によれば、これにより、少なくとも27名の民間人が死亡しました (AllAfrica)。また、1月9日には同じくケニア国境に近いアフマドゥ(Afmadow)などの村落に対してヘリコプター2機による攻撃が行われ、31名が死亡しました (AllAfrica) 。さらに、1月22日には、ラス=カンボニ(Ras Kamboni)およびクルビヨゥ(Kulbiyow)へのAC-130による攻撃が行われ、20名が死亡したとの報道がなされています (BBC)

 米国政府は2007年1月9日、この攻撃を「テロに対する地球規模の戦争の一環」として位置づけ、「アル=カーイダを追撃するために、爆撃を含むあらゆる作戦を発動する」として、攻撃の正当性を主張しました (UPI) 。米国政府のこの声明から、私たちは、米国の「テロとの闘い」の前線がアフガニスタン、イラクに続いて、なし崩し的にソマリアに拡大したと解釈せざるを得ません。

 私たちは第一に、ソマリア南部で現在生じている事態について、強い懸念を表明します。ソマリア南部は1991年以降の内戦により疲弊し、40万人以上の国内避難民を抱えています。また、2006年秋の干ばつとその後の洪水により、深刻な人道危機が生じています。2006年末以降に生じた軍事行動は、これらの人道危機を悪化させ、また、首都モガディシュの法秩序や治安を不安定化させています。暫定連邦政府、イスラーム法廷評議会を含む全政治・軍事勢力は戦闘行為を中止し、現在存在している人道危機の解決と国内避難民の安全を保障すべきです。また、各国政府および国際機関は、ソマリア紛争の解決にむけ、ソマリア市民の利益の尊重を中心におき、紛争や自然災害による被害をこうむっている人々の救援と人道問題への対処を行う必要があります。

 また、私たちは日本のNGOとして、日本政府に対して、主要国・周辺国の政治的思惑に左右されることなく、ソマリアにおける平和の実現に向けて外交努力を行うことを求めます。1993年に始まる「TICAD」(東京アフリカ開発会議)プロセスにおいて、アフリカのオーナーシップに基づく紛争解決と平和定着の促進を掲げてきた日本が、ソマリアにおける平和の実現に向けて主導的な役割を果たすことを、私たちは願っています。

 私たちは第二に、米軍によるソマリア攻撃を強く非難するとともに、米国政府がただちに攻撃を停止し、今後ソマリアへの攻撃を行わないことを誓約することを求めます。その理由は以下の通りです。

 1.米軍の攻撃により、多数のソマリア市民が殺戮されたこと。
 1月8〜9日および22日の攻撃により、報道されているだけで合計100名近くのソマリア市民が殺戮されました。報じられているところでは、これだけの犠牲を出しながら、米軍は攻撃の目的を達成することが出来なかったとのことです。米軍が今後も同様の攻撃を続ければ、今後も無辜のソマリア市民の殺戮が継続されることになりかねません。

 2.米軍の攻撃は、国連を始めとする国際的な合意を経ることなく実行されたこと。
 米軍の攻撃は、国連安全保障理事会の決議をはじめ、何ら国際的な合意を経ることなく行われたものです。これらの攻撃は、周辺国の合意すら得ていません。1月8日の攻撃に関して、攻撃機の出撃元となった軍事基地を抱えるジブチ共和国の外相は、「ジブチは米軍のソマリア攻撃について知らされなかった。このような攻撃は平和の達成にとって有害だ」と述べました (BBC) 。こうした攻撃は、周辺国や地域機関等によって行われてきた和平努力を無に帰するばかりか、地域の人々の憎悪をかき立て、戦争を拡大することにつながりかねません。

 3.難民・国内避難民の救援、人道危機への対処について、悪影響を与えていること
 潘基文国連事務総長は1月11日、米軍の攻撃が当該地域の人道支援活動に悪影響を与えるおそれについて、懸念を表明しました。米軍の攻撃が行われた地域に近接するケニア=ソマリア国境には、数千人の国内避難民が存在しているといわれており、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も、米軍の軍事行動との関連で生じている同国境の封鎖が難民救援に与える影響について懸念を表明しています (UNHCR) 。米軍の軍事行動はケニア=ソマリア国境に存在するこれら国内避難民の安全を危機にさらすものです。

 私たちはソマリアにおける紛争や米国政府が軍事攻撃の理由としている「テロリズム」の問題は、軍事的な強硬手段によって解決できるものでないことを知っています。1991年にソマリア南部が有効な統治機構を喪失して以降16年間、米国を始めとする国際社会は、ソマリアを放置するか、もしくは一貫性のない無定見な介入を行うかのいずれかでした。現在のソマリアの状況は、その帰結であるといえます。「破綻国家」の放置や当事者の合意なき軍事占領、軍事攻撃は、「テロリズム」問題の解決にとっても逆効果であるばかりか、テロリズムに根拠をあたえ、これを拡散させることにつながりかねません。今、ソマリアにとって必要なのは、軍事占領や攻撃ではなく、人道危機にある人々の救援、紛争解決、平和構築、平和の定着のための長期的かつ地道な努力であるはずです。

 以上より、私たち日本のNGOは、ソマリアにおいて現在進行している事態に強い懸念を表明すると同時に、米国がソマリアへの軍事行動を直ちに停止し、今後ソマリアへの軍事行動をしないことを誓約すること、紛争の全当事者が軍事行動をやめ、国際社会が連帯して、ソマリアの人道危機の解決と平和の実現、定着にむけて全力を尽くすことを求めます。また、日本・世界のNGO・市民社会、各国政府、国際機関に対し、ソマリアで現在進行している事態の重大性を認識し、より一層の注目を払うことを呼びかけます。

以上

【本声明連絡先】
(特活)アフリカ日本協議会
   担当:稲場雅紀 電話:03-3834-6902, E-mail:info@ajf.gr.jp

アフリカ平和再建委員会
   担当:小峯茂嗣 電話:03-3351-0892, E-mail: info@arc-japan.org

(特活)日本国際ボランティアセンター
   担当:渡辺直子 電話:03-3834-2388 E-mail: info@ngo-jvc.net


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